立沢克美×原泰久 痛快対談 1回 立沢克美×原泰久 痛快対談 2回 coming soon...


立沢
単行本出たよね?
え?ありがとうございます。
立沢
45巻だっけ。どこまで行きますか?描き終わるまで死なないでよ(笑)。
それは心配ですよ(笑)。でも僕自身、どれくらい作品が長くなるか、正直わからないんです。連載始まった頃に親に「100巻まで行くよ」って話したことがあって、そしたら「1巻で終わるんじゃないの」って言われました(笑)。
立沢
ハハハ。じゃあまだ半分行ってないんだ。そういえば原クン、デビューから何年になるの?
2006年デビューだから12年目ですかね。
立沢
たまにしか会わないから早く感じるなあ。そういえば最初に会ったのって井上先生の仕事場だったよね?
そうです。ちょうど新しい仕事場に引っ越したばかりで、まだ段ボールがいっぱいで散らかってたけど、広いなーって。

立沢
それって2005年?全然覚えてない。
春でしたよ。週刊ヤングジャンプで連載が決まって、「やったー」と思ってたら当時のヤンジャンのN副編集長から「原クン、ちょっと修行に行っておいで」って言われたんですよ。どこかなって思ってたら「井上先生のとこだよ」って。初めは3ヶ月だけのはずだったのが、4ヶ月ちょっと勉強させてもらいました。
立沢
えーウソだー。もっといたような・・・。
社長(※井上先生のこと。井上さんのアシスタントはみんなそう呼ぶ)とは最初、全然喋れなかったです。「おはようございます」と「お疲れ様です」しか喋れなくて。
立沢
原稿やってる時は、基本僕らもそうだし。
社長と初めて会った時は、すごい緊張したんです。僕は人に対してあまり緊張したことがないんですよ。社長含めて今まで2人くらいしか緊張したことないし。社長に会ってオーラって本当にあるんだなって思いました。

立沢
そうなんだ。じゃあ原クンが緊張した人の社長以外のもう1人って誰?
・・・覚えてません。
立沢
なんだそれ(笑)。
井上雄彦アシスタントとして共に働いた2005年、あの頃のエピソードに笑い、思考し、仰天する!
ハハハ。どのくらい緊張してたかというとですね、ある日、指示がわからなくて社長にしか聞けない時があって、でもずっと描かれてたから僕が話しかけて邪魔するわけにもいかないし、タイミングがわからなかった。で、閃いたのは描いている時は右手が下がってるから、ひと段落ついた瞬間の右手を上げたところで、突っ込んで行こうと。ナイスアイディアと思ってたら、なかなか社長の右手が上がらない(笑)。僕は“忍び”のように柱のところに隠れてタイミングを伺ってたんですよ。
立沢
ハハハ。そんなことしてたんだ(笑)。
で、上げた瞬間にダーーッとダッシュして聞きに行きました。そのくらい話しかけられなかったですね。
立沢
締切間際は特にね。
漫画家さんも初めて見たし、アシスタントと呼ばれる人も、社長の仕事場で初めて見ましたからね。かっこいい部屋でかっこいい人たちがいて…。みなさん、絵を描く人に見えなかった(笑)。この人たちがアシスタントなのか~ってポカンとしてましたよ。
立沢
ホント?
その時にチーフだった立さんは、うまいオーラを見せなくて。絵が上手い人って何かあるんですけど、素振りさえ見せない。騙されたなぁ(笑)。僕はてっきりTさんが一番上手いのかと思ってました。そしたらTさんが「いやいや立さんは、バケモノだから」って(笑)。


立沢
Tは喋りやすかったでしょ?
デスクも隣だったですし何でも教えてくれました。僕、アシスタントの最初は『リアル』だったんですよ。初めて手伝ったのは、野宮が夏実に戸川が載ってる雑誌の記事を見せるっていうシーン。
立沢
『リアル』スタートだったんだ。
はい。まずびっくりしたのが、僕のところに社長が原稿をポンと置かれたんですよ。しかも一言もなく。
立沢
あー、はいはい(笑)。
生原稿だし、どうしたらいいのかさっぱりわからない(笑)。そしたらTさんに「原クン、ワク線引こうか」って言われて。緊張しながらも何とかワク線を引き終えたら、もう次がわかんなくて。またまたTさんが「原クン、下描きしようか」って(笑)。細かいところはTさんが全部教えてくれました。でもペン入れになると、全く描けなくて。それでもどうにかこうにか描いたんだけど、立さんに見せたら「原クン、とりあえず切り貼りしよっか」って(笑)。その時に社長が「切り貼りはちゃんと覚えとけよ」って初めて話しかけられました(笑)。
(※切り貼り…原稿で失敗したコマをカッターで切り取り、同じ大きさの用紙を裏から貼って修正するという技法)
徹夜明けでフラフラしながら朝もやをつまみに飲んだカリフォルニアワイン…これって青春(笑)?
立沢
そうだったね~。でもTもそうだけど、原クンも喋りやすかったよ。
技術がないのは、わかりきっていたので、兎に角おしゃべりだけは頑張ろうと(笑)。
立沢
溶け込もうみたいな(笑)。でも、よくみんなで遊んだなあ。
当時は週5くらい泊まり込みだったから、夜遅くになるとみんなで飲んでましたね。
立沢
ロクでもない生活だったなあ。
夜になるとソワソワしてましたよ。もうじき飲めるな~って。
立沢
そんなに酒好きだったっけ?
みんなで飲むのがすごく楽しくて。
立沢
明け方に中庭みたいなとこで、ワイン飲んだなあ。
眠いのと疲れと酔っ払ったのとで景色が全部カケアミに見えましたよ。ついでにアシスタント仲間のMさんの顔までカケアミ(笑)。
(※カケアミ…漫画における効果の代表的な技法の1つ。スクリーントーンの普及してない時代によく使われた手間のかかる作業)
立沢
ハハハ。あとは下北沢をブラブラしたりとか。外に出るのはいいんですよ。身体にもいいし。どうしても締切が近くなると、ずっとデスクで作業してるから引き篭もらざるを得ないしね。
そうでしたね。みんなで『SLAM DUNK』のTシャツを着て、練り歩いてましたね。そうそう、ハンバーグ食べに新宿行ったこともいい思い出です。
立沢
ゴールドラッシュだ(笑)。また食いたいなあ。
僕は途中から買出し係だったから、買出し行きますっていうと、オレもオレもってなって結局、みんなで出掛けたり。
立沢
懐かしいね。何気に楽しかったなあ。

1975年6月9日佐賀県出身。2003年、集英社の第23回MANGAグランプリにて『覇と仙』が奨励賞受賞。同年、『金剛』でデビュー(漫革Vol.36)。井上雄彦のアシスタント(当時のチーフアシスタントは立沢氏)を経て、2006年「週刊ヤングジャンプ」9号から『キングダム』連載開始。2012年にNHKにてアニメ化、2013年には第17回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞。現在(2018年1月)、YJC『キングダム』49巻、大絶賛発売中!

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